高齢者に多い誤嚥性肺炎や口臭の原因『口腔内の乾燥』
コラム 本田歯科のこと
2021.10.26
日本人の死因の割合において、肺炎が増えてきています。
肺炎と誤嚥性肺炎を合わせると死因の4番目になり、たくさんの方が亡くなっています。(2020年時点)
高齢者の肺炎の多くは「誤嚥性肺炎」です。
誤嚥とは、食べ物等が食道でなく、気管に入ってしまうことで、それが原因で、肺炎になることを誤嚥性肺炎と言います。
目次
誤嚥性肺炎の原因
この誤嚥性肺炎、実は唾液や口周りの筋肉の衰えなども関係しているんです。
通常、唾液は1日におよそ1.000ml~1.500ml分泌されますが、加齢と共に分泌量が減ってきます。
高齢者の唾液の分泌量は、20代の人と比べると約7分の1に減少するとも言われます。
慢性的に唾液が不足すると、
- 食べ物が食べにくくなる
- 舌に痛みを感じる
ようになったりします。
唾液は、口の中の衛生性を保ち、食べ物を噛み易く、飲み込み易くする働きもあるので、唾液量が減ると誤嚥性肺炎や口臭のリスクは増大します。
唾液量が減り乾燥する原因は?
加齢による唾液腺の機能低下で口の中が乾燥します。
他にも、
- 口呼吸や柔らかい物を食べる事が多い
- 薬の副作用
- 精神的な緊張やストレス
- 糖尿病や腎臓病などの病気
- シェーグレン症候群という自己免疫疾患
などが原因で口の中の唾液量が減り乾燥します。
お口が乾燥すると何が起こる?
口が乾燥することで、
- 食べ物が飲み込みにくくなる
- 舌が痛い
- 舌苔が付きやすくなる
- 味覚が変化する
- 偏った食生活になる
- 口の中がネバネバする
- 入れ歯が外れやすくなる
- 自浄作用の低下で舌粘膜についた汚れや細菌を洗い流せず口臭の原因となる
- 常に口の中の違和感や不快感がある
など、様々な弊害が起こります。
では、一度減ってしまった唾液量を増やすことはできないのでしょうか?
唾液量を増やす方法
実は、日々の少しの工夫や心がけで唾液量を増やすことができるのです。
唾液量を増やす方法として、
- 噛む事で唾液腺が刺激されて唾液の分泌が活発となるため、よく噛んで食べる
- 水分を補給して口の中を潤す
- 鼻呼吸を心がける
- レモンや梅干し、昆布や納豆、セロリや人参、アーモンドなどの唾液の分泌量を促進させる食べ物を摂る
などがあります。
また、唾液量の減少しにくくするために、口の中の乾燥を防ぐことも大切です。
自宅や施設などで口の中の乾燥を防ぐ方法として、
耳の下や顎の下にある唾液腺を刺激する
方法として「唾液腺マッサージ」が効果的です。
マスクを着用して乾燥を防ぐ
高齢者は口の周りの筋力が弱まり常に口を開けがちなので、マスクの着用をすることで乾燥を防ぐことができます。
室内の湿度を上げる
最適な湿度は40~60%です。
口腔ケア
口腔ケアでの口の中の清掃も関係します。
お口の中を清掃すること自体が刺激になり、唾液が分泌されることがあります。
これらの工夫を行ってみてください。
歯科医院で行うプロフェッショナルケアには、メリットがたくさんあります。
セルフケアでは除去できない部位、
- 歯ブラシが届きにくい歯周ポケット
- 舌の清掃
- ブラッシングでは落とせない歯石
- バイオフィルム(プラーク)の除去
などを専門的技術や装置を使って、より効果的な口腔ケアを行う事で口の中の細菌数を減らすことが出来ます。
その結果、口の中が清潔に保たれ、各組織の機能が高まる事で唾液の分泌が促進され、感染症や発熱などのリスクも減らすことが出来ます。
又、しっかり噛んで物が食べられる事により、効率良く栄養補給ができため、体力の向上にもつながります。
その他に、舌の味覚を感じる機能が高まる事により、食べる楽しみが取り戻せます。
さらに、口や舌の動きが良くなると、はっきりと発音ができ滑舌が良くなる事も期待できます。
口の中の清潔が保たれる事で口臭が減る事とも合わせ、以前より積極的に、会話を楽しむことが出来る様になるかもしれません。
まとめ
口腔ケアは、感染症の予防や重症化の軽減にとって非常に重要です。
その効果は、口の中に留まらず、身体全体の健康にも繋がっています。
逆を言えば、口腔ケアを怠ると誤嚥性肺炎の発症や認知症の進行などで、身体の衰えが想像以上に進んでしまう事さえあります。
プロフェショナルケアを利用する事により、効果的な口腔ケアを心がけて下さい。
執筆者: 歯科衛生士 鳥羽
本田歯科クリニック 京都本院 訪問
075-645-7050