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妊娠を望む方はまず⻭科治療を!歯周病が赤ちゃんに与える影響

コラム

 

 

妊娠してから出産にいたるまでの 10 カ月、主に卵巣で作られる女性ホルモンの分泌が増加し、体に急激な変化が起こります。

 

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(⻩体ホルモン)の二種類があります。

 

エストロゲン

子宮の発育、子宮内膜の増殖、乳腺の発達

 

プロゲステロン

母体の体温を高めに保つ、子宮に送られる血流を増やす、胎盤が出来るまで栄養を送り続ける、赤ちゃんの発育の促進

 

女性ホルモンの増加により、子宮内で赤ちゃんが育ちやすい環境となります。

 

一方で、

  • つわりがはじまる
  • 胃腸の働きが弱くなる
  • 血流量が増えるが、赤血球中のヘモグロビン値が少なく、貧血になる
  • 自律神経の乱れから、動悸を引き起こしやすくなる
  • 息切れやめまい、眠気やだるさ、疲れやすさを感じる
  • 唾液は粘着性が出て、自浄作用が低下する
  • つわりや味覚、嗜好の変化から口腔内が酸性になる

という状態にもなります。

 

つわりが口腔内に与える影響

つわりはホルモンバランスの急激な変化に体が順応出来ずに起こります。

食欲不振や吐き気・嘔吐などのため、少量ずつしか食べられなくなることがあります。

 

食事回数や間食が増えることで、口腔内に⻭垢が溜まりやすく、口腔内細菌が増える原因となります。

 

また、唾液の分泌量が異常となること、粘着性となり自浄作用が低下することに加え、つわりにより口腔内が酸性に傾いて、⻭の表面のエナメル質が弱くなることがあります。

つわりの時期は、においや刺激に敏感となり、⻭磨き粉の味やにおいでも吐き気を感じることもあります。

⻭ブラシを口腔内に入れるだけでも嘔吐反射が起こり気持ち悪く感じる方も多くいるため、

 

口腔ケアが疎かになりやすい時期です。

ですから、

「時間に関わらず体調が比較的良い時に⻭磨きをして下さい。」

「口を大きく開け過ぎず、⻭ブラシのヘッドが小さめの使用し、どうしても難しい時はうがいだけでもしましょう。」

といった指導が必要です。

 

⻭周病を治療しよう!
⻭周病が赤ちゃんに及ぼす影響

 

⻭周病は、⻭周病菌による感染症で、⻭肉や⻭周組織に炎症が起こります。

 

⻭肉の腫れや出血等の炎症は、⻭周組織を守るための防御反応ですが、その時に発生した炎症物質は血流にのって全身に運ばれることがあります。

 

子宮や胎盤に到達すると子宮内で同じような炎症症状が起こってしまう可能性があります。

妊娠すると通常よりも⻭周病に罹患しやすくなり、赤ちゃんに影響を及ぼしてしまうのです。

 

早産・低体重児出産のリスク

 

妊娠中の口腔内は衛生環境が悪化しやすくなります。

⻭周病菌や炎症物質が血液を介し、子宮や胎盤まで運ばれて感染すると、子宮の収縮や子宮頸部の拡張を起こし、早産(37週未満)や、低体重児出産(2500g未満)の危険性が高くなります。

 

早産の原因として、陣痛が始まっていない段階で卵膜が破れて、羊水が子宮外に出てしまいます。

早産時期に破水してしまうと赤ちゃんは感染リスクが高まり、短時間のうちに自然陣痛が始まってしまいます。

 

妊娠性⻭肉炎や妊婦性エプーリス

 

妊娠性⻭周炎はホルモンバランスの変化に伴って起こる⻭肉炎です。

 

エストロゲン

⻭周病菌が繁殖しやすい状態を作ってしまう

 

プロゲステロン

血管壁の性質が変わり、血液成分の透過性がよくなり、⻭肉の発赤や炎 症の原因を刺激する

 

妊娠中は、

  • つわりによる食生活の乱れ
  • 不十分な口腔ケア
  • 唾液の分泌量の変化

で自浄作用が低下します。

 

その結果、⻭肉の腫れや出血だけでなく悪化すると⻭周組織にまで炎症が広がってしまいます。

 

妊娠性エプーリスは、⻭肉の腫れや出血に伴う良性の⻭肉種の一種です。

前⻭部⻭肉に発生することが多く、⻭肉の腫れで⻭ブラシが当てづらく、汚れが溜まりやすくなります。

 

通常は女性ホルモンが関与しているので、出産後は自然に減退・消滅することが多いですが、 重症化すると本格的な⻭周病となってしまうために注意が必要です。

 

妊娠を望む方はまず⻭科治療を!

 

妊娠を考えている女性にも軽い症状を含めて、⻭周病に罹患している人は多くいます。

 

⻭周病は、自然治癒することはありません。

 

⻭周病は、ある程度病状が進んではっきりとした症状が出るまで自覚しないこともあります。

⻭周病菌が増えると免疫やホルモンバランスに影響があり、生殖機能の低下が懸念されています。

 

妊娠前から必要な所は治療しておきましょう。

 

まとめ

 

昔は「一子産むと一⻭失う」と言われ、母親の⻭のカルシウムが赤ちゃんに取られるので⻭が悪くなると思われていました。

 

実際にはそうではなく、

女性ホルモンの影響、口腔内環境の悪化から虫⻭や⻭周病に罹患しやすく、進行させてしまうのです。

 

生まれたばかりの赤ちゃんの口腔内にはむし⻭菌や⻭周病菌はいません。

そのため、家族全員が虫⻭や⻭周病の予防に取り組むことも必要です。

 

近年、⻭周病と全身疾患、認知症との関係も報告されています。

 

⻭科医院での定期的な検診を受けて予防治療を行い、もし罹患した場合は早期発見、早期治療を行い、健康管理に努めてまいりましょう。

 

執筆者: 歯科衛生士 小嶋

本田歯科枚方クリニック
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